くきなみ村から

人生万事大丈夫

2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

【詩】汚れたタオル

家族総出でバスに乗って、家族総出で街に出る。そういう家庭が多かったから、休みの日もバスは多かった。そういう家族が集まるから、休みの日の街は賑わっていた。ついでに家族総出で映画に行って。ついでに家族総出でラーメンを食って。だから映画館は潤っ…

【詩】19の頃

雨が降りしきる 小さな街の中をいつも傘もささずに ぼくは歩いていた19の頃ぼくには 何も見えなかった時の流れでさえもいつも自分を作っては 日々を送っていた大人びたしぐさに 人目を気にしていた19の頃ぼくには 自信もなくてつまらぬ人の言葉に 流され…

【詩】無表情な砂色

夕方五時のサイレンが鳴ると、無表情な砂色の工場から工員たちが出てくる出てくる。作業着姿の寡黙な工員たちがカラカラに乾いた道をさながら高校球児のように土煙を上げて行進する。すべての工員の行進が終わると、ガラガラと門扉が閉じられ、工場はその一…

【詩】今日の決心

行動のひとつひとつに「大丈夫!」と唱えてみる嫌なことひとつひとつに「ありがとう」と言ってみる身に起きる事ひとつひとつを夢につなげて考えてみる日々の出来事ひとつひとつを夢への過程だと思ってみる今日が大吉であるために『今日の占い』を見ないでお…

【詩】自分を鍛えましょう

これでは駄目だと言われたらもっと自分を鍛えましょう。鍛えてもう一度やりましょう。誰が悪いわけではない。自分が悪いわけでもない。きっと何かが足りなくてそれに気づけと言うのでしょう。別に焦った人生でもないしもっと自分を鍛えましょう。じっくり自…

【詩】ライク・ア・ローリング・ストーン

意識と無意識との間に一種怯えの固まりがあってコロコロ、コロコロ転がってくるんだ。それが疲れを運んでくる。それがイライラを連れてくる。それが夢を拒んでいる。それで一歩が進めない。その部分に熱を加えて溶かしてみたらそういうものすべてから逃れら…

【生活】日常的な非日常

毎日毎日、街の中をパトカーや消防車や救急車などの悲愴さを誘うサイレンの音が無表情に鳴り響いている。その音を耳にした時、ぼくは「もしかしてあの音、家の前で止まるんじゃないのか?」と、いつも思っている。別に心配しているわけではない。その度にワク…

【詩】笑って家に帰ろう

晴れた日はもちろん雨に濡れたとしても笑って家に帰ろう。台風の中を歩いた日も雪の中で倒れた日も笑って家に帰ろう。試合に勝ったらもちろん試合に負けたとしても笑って家に帰ろう。誰かとケンカをしても誰かに激しく罵られても笑って家に帰ろう。今日を幸…

【生活】今日はいい日だろうか?

ある日のこと。顔を洗ったあとタオルで顔を拭いたら何かが唇に付着した。何だろうと手にとってみるとちぢれ毛だった。ある日のこと。シャツのボタンの位置が昨日までとは違っていた。「えっ?」、動作が止まった。一、二分して、ようやく裏返しだということ…

【詩】巣立ち

1、2、3で飛び出すんだ。今は技術なんか必要ない。今必要なのは勢いだけだ。飛びたいという気持ちを自分の中で大きく膨らませとにかく羽を動かしてここを飛び出すんだ。振り返れば何でもないことだ。我々はその能力を生まれつき持っているんだから。さあ…

【詩】深夜の妖怪

ヒタヒタ、ヒタヒタ迫る深夜の妖怪に怯えながらぼくは相も変わらずこの書き物をしている。『いったい何のために書いているんだろう?』『いったいどこの誰が読んでいるんだろう?』なんてことは一切考えずただ、思いつくままにいや、誘われるままにこの書き…

【詩】ご時世

毎朝六時に鳴るお寺の鐘がたまに聞こえないことがあると住職は愛人宅にいるのかなと一応疑ってみるご時世です近所に住んでるお年寄りの姿を二、三日見かけなかったら死んだのではないのかと自然に思うご時世です昔からある街の本屋が何日か休んでいたりした…

【詩】月木の鴉

毎週月曜日の朝と木曜日の朝は他の曜日よりも鴉が多いのです。その日は生ゴミを出す日なので鴉が多いのもわかるわけですが、ヤツら人間がゴミを出す前からカーカー大騒ぎしているのです。もしゴミを出す日時がわかって鴉が集まっているのだとするとヤツら鴉…

【詩】いっしょに歩こう

夜も濃くなる街 寂しさだけの遠吠え雨もやんだばかり もう傘をたたんで 通りすぎていく車 照らしていくネオン いっしょに歩こう たった二人だけで雲の透き間の星 かすかに影を映し夢のようなランデブー 公園のベンチは濡れ 何もかも忘れ すべてはひとつ いっ…

【詩】トレインブルース

また乗り遅れてしまった。いつもそうだった。また乗り遅れてしまった。あの日もそうだった。いつもホームに残される。駅員も客ももういない。いつもホームにはぼくひとり。駅員も誰ももういない。ちょっとした時間の狂いが、いつもぼくを遅らせる。ちょっと…

【詩】これでもかと雨が降る

これでもか、これでもか、これでもか、これでもか、これでもかと雨が降る。辺りは水煙で真っ白だ。普段は人通りの多い昼日中、今日は誰も歩いてない。これでもかっ、これでもかっ、これでもかっ、これでもかっ、必死になって雨が降る。水不足が深刻だと言っ…

【詩】人生は天才である

夢は天才である。外から突然飛び込んできた音を夢の中に瞬時に取り込み何の不自然もなく完璧な物語に仕上げてくれる。更には精神状態を物語にしたり、時には予知までもしてくれる。そういう偉大な天才を背景に持っているのが人生で、夢の具現化が人生である…

【詩】赤いエプロン

就職をした頃のこと職場の掃除をやっていると、後ろから「すいません」という小さな声が聞こえた。振り向くとそこにいたのは、初めて見る同期の女性。その時突然ぼくの目に、浮かんだ一つの光景── 赤いエプロンを着けて、 台所の向こう側で、 笑顔でうなずき…

【詩】およそ10メートル

玄関から車までの距離はおよそ10メートルである。およそ10メートルという距離は傘を広げている間に車に着いてしまう距離である。およそ10メートルという距離は傘を広げている間に車に着いてしまう距離だから傘をさす人はまずいない。およそ10メート…

【詩】喜劇と悲劇

社会というのはね、人間の持っているこだわりという不可解な部分をテーマにした喜劇なんだよ。つまりこだわりとこだわりとのぶつかり合いというおかしさでこの社会は成り立っているんだ。だからこんな不可解な世の中になるんだよ。こだわりをなくすと何ごと…

【詩】夢のかけはし

夢のかけはしをひとり渡ろう風もなく、波もなくただ静かな闇の上を通り過ぎる日よ、音もなく続くかもし出す街の灯は影も映さず ああ、なぜにあの人はいぬ 声を上げ振りかえる日々よ 時は過ぎ、愛は朽ち 切ない夜よ夢のかけはしは、まだ遠く長くうたもなく、…

【詩】おれたちの時代は

おれたちの時代はいつも風が吹いていた自由の風、夢の風、きな臭い風、愛の風、その時々に風を追いその時々の風に乗り数多くの人たちが空の中に舞い上がりそして彼方に消え去ったおれたちの時代はいつも風が吹いていた

【詩】扉

さてようやくここまで来たけれどこの重そうで軽そうな扉はいったいどうやれば開くんだろうか。押すんだろうか引くんだろうか。待っていればいいんだろうか。呼べばいいんだろうか。叫べばいいんだろうか。叩けばいいんだろうか。叩き続ければいいんだろうか…

【詩】天、散弾して地を覆う

天、散弾して地を覆う公園カラスが騒がしいその電柱から退去しろ光の弾が襲ってくるぞ その電柱から退去しろ 天、散弾して地を覆う地、被弾して川と化す公園カラスが騒がしいいったん山に避難しろ水に飲まれて流される いったん山に避難しろ 地、被弾して川…

【詩】美学

若い頃に馬鹿やって三十四十で落ち着いて五十六十でいっぱしの人生論者になり果てるそんなの全然美しくない。目立たず大人しく年取って不良やるのは三十四十夢語るのは五十六十年を重ねていくごとに弾けていくのが美しい。

【詩】ぼくの夏

大きく開いた空の下を夏、きみと二人で歩いていく静かな風は汗をぬぐって蝉の輝きは時を止める遠くで子供達が野球をやっているカビの生えた思い出が日にさらされ今にも飛び出しそうなぼくの幼さをきみは笑って見つめているそうだこの夏、海へ行こう忘れてき…

【詩】晴時々笑う

晴時々笑う夢に向かって笑う希望を抱えて笑う晴時々笑う曇り時々笑うくじけそうな時笑う泣き出しそうな時笑う曇り時々笑う雨時々笑う傘も持たずに笑う背中を濡らして笑う雨時々笑う笑う、笑う、笑うとにかく笑う明日のために笑う笑う、笑う、笑う

【詩】トンボ系の家出

トンボ系の家出しとったんよトンボ系の家出しとったんよカゴのすき間から抜け出してスイスイスイスイ飛び回って今回どこまで行ったんだっけ地名も何にも覚えてないけど何日もかけて、羽を動かしてかなり遠くまで行ったんよね疲れて枝に止ってた時だった追い…

【詩】一歩を踏み出そう

出来なかったことを考えるから、今がとてもやりきれない。いつかやり直しがきくんだと、曖昧な日々を過ごしてきた。そこからのことを考えないから、日々はいつもの繰り返し。まだ若いという勘違いは、そこから一歩を出てないから。 このままではだめだ。 一…

【詩】六月の風

六月の風が熱く吹く。もはや梅雨を忘れた炎天は、地表のすべてを焼き尽くす。炎を含んだ風はいつまでも吹き止まず、生態系は呼吸をも束縛される。口から、鼻から、毛穴から、あらゆる呼吸器官を、六月の風は確実に占拠する。さまざまな感情をすべて焼き尽くす…