2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧
競技を見ていると失敗しないかとかこけやしないかとか余計な心配をして心が疲れてしまう。だから距離を置いてこの競技あの競技の経過だけ結果だけを見ることにしている。そうすれば勝てば喜ぶだけですむし負けても悔しさはその時だけですむ。そうやっていつ…
久しぶりに東京の街を歩いた時ぼくは夏の日のことを思っていた。思い出はすべて豊洲の埠頭から荷を積み出していた時のことばかり。何があったわけではない。ただ、その毎日の繰り返しが懐かしくて・・・午後十時に終わる仕事だった。それから銭湯に通うのだった…
きみの唇に触れたのは初めて知った恋なのか意地を張った夢なのか幼かった、夏の日にぼくはバスの影を見た静寂の中、気がつくと一人の女子が心にいたありふれた恋だった中学時代、ぼくは一人バスを探っていたきみを乗せたバスが見えなくなるまでずっと目で追…
さりげないためいきやめて今日から真面目にやっていくんだ昨日吐いたあの言葉に嘘や偽りはないんだからそしていつか見返してやるんだあいつも、あいつも、みんなまとめてあの日のぼくは正しかったんだとそれがぼくの人生だったと もう振り返らない 風は追い…
昔録りだめておいたビデオにたまに当時のニュースが入っていることがある。そういう時はつい見入ってしまいああ、この当時こういうこともあったなあ、なんて思っている。ところがこの当時とはいうもののこの当時がどの時代だったのか。それがいつもわからな…
昔録っておいたビデオを見ていると、たまに当時のニュースが入っていることがある。そういう時はつい見入ってしまい、「ああ、この当時こういうことがあったなあ」なんて思っている。 それに絡んで、ちょっと困った問題がぼくの中で起きている。それは、この…
これがあったら幸せな人生が約束されるという宝物っていったい何なのだろうこれだけあったら劇的に人生が変わるという金額っていったいいくらだろうこれを唱えたらどんな願いでも叶うという呪文っていったいどんな言葉だろうこれを飲んだらいつまでも長生き…
こうやって何十年経つのだろう。わたしはこの切り株の上に座り船がくるのをずっと待っている。どこかの国から流れ着いたビールのジョッキを手に持っていつまでもいつまでも海を見ている。船の姿を見つけることがあればこの切り株の上に座ったままにここまで…
アブラゼミやクマゼミの大合唱の隙間からツクツクボウシの小さな声が漏れてくる。これから隙間が広がって、今年もセミの合唱隊のトリを飾るだろう。今はただ申し訳なさそうにツクツク・・と鳴いている。
山には天狗がいるから決して一人で行かない方がいい。バキッと木の裂ける音がするのは天狗がさらおうとしているのだ。川には河童がいるから決して一人で行かない方がいい。その流れに見とれてしまうのは河童が引き込もうとしているのだ。森には狐狗狸がいる…
川底に眠っている言葉をスコップで掘り出しては瓶に詰めて保管している。川底には祖先達の残した偉大な言葉が眠っている。その量はかなりなものですべてを掘り出すことは一生費やしても不可能だ。だけどその一部だけでも自分のためにならんかと人様のために…
この世に出てくる前にあなたはこういう場面を体験して、こういう人たちと出会って、こういう仕事に従事して、こういう終わり方をするんだと、自分で企画しましたよね。これこれこういう人生はつまりあなたの意志なのです。だから私たちは気分よくあなたの背…
煤けたような灰色の雲がまだらな雨を落としている。この狭い狭い谷間の町に艶抜けした黒い機関車がまるで白く見える煙を吐き体を揺らせながら入ってくる。行き交う人の姿は傘に隠れ男女の見分けすらつかぬ。その中を薄茶色の紬女が傘もささずに歩いている。…
山が高いのは頂が視線より上にあるからさ花が美しいのは、そこに見る人がいるからさ冬が辛いのは暖かい部屋があるからさ春を喜ぶのは冬を耐えてきたからさ夢が楽しいのは楽しくない現実があるからさ明日が不安なのは今日を失うことを怖れるからさこの街が好…
風の絵描きさんは白い絵の具を集めて青空のキャンパスに一筆で画を描きあげる描きあげては一番目立つ所にその画を展示するすべての人が鑑賞できるようにその画を展示する
ぼくにはね、何ヶ月か前から足底何とかという炎症があってね歩き始めが少し痛いんだよ。だからゆっくり歩いてほしいんだな、ベイビーだけどゆっくり歩くことはいいことだよ。新幹線だと見えない風景が普通電車だと見えるように物事がはっきりと見えるように…
おかあさんは猫のサークルに おとうさんは狸の飲みごとに夜はだーれもおりませんです 空しく灯がついてるだけです
ぼくらはドラムのセットを抱え、田んぼのあぜ道を歩いていた。空には一片の雲もなく、午後の日差しが頭をめがけ、容赦無しに降り注ぐ。ジージーワシワシ樹木の蝉と、ギーギーギッチョン草むらの虫が、だらしい暑さのリズムを刻む。ドラムを持つ手はふさがっ…
大山椒魚のような形をした真っ黒で巨大な雲がゆっくりとゆっくりと東に向かっている。ああ、こりゃまた雨が降るな。ぼくは心の中のスクリーンにすでに雨を降らせている。と思う間もなく車の窓に一個二個三個、大粒の雨がぶち当たる。ぶち当たる。四個五個六…
雲を脱ぎ捨てた太陽が体を焦がしにくるので今日の夏は疲れます。不快指数を上げる風が肌にまとわりつくので今日の夏は疲れます。頭から流れる汗の粒が角膜を覆って痛いので今日の夏は疲れます。街に漂う焼肉の臭いが鼻の中にはびこるので今日の夏は疲れます…
とぼとぼと牧師が行く。すり足の和尚が行く。鳥歩きの神主が行く。背の低いラーメン屋が行く。禿げ上がった寿司屋が行く。オール電化の電器屋が行く。ヘビーメタルの男が行く。股旅演歌の女が行く。内股のサバ少年が行く。外股のカニ少女が行く。急ぎ足の音…
海原に白く見えるのは波であり、鳥であり遠くを行く船の色であり窓に反射する光であり異国からの便りであり小人の島の灯台でありボートであり、ブイであり時に跳ねる魚であり小さなイカの群れであり気化された潮の精でありこの季節の日差しであり生きていく…
百回の苦しみは百倍の優しさに変わる百回の痛みは百倍の喜びに変わる百回の憎しみは百倍の愛に変わる百回の悲しみは百倍の創造に変わる百回の失敗は百倍の成功に変わる百回の行動は百倍の財産に変わる百回の想像は百倍の現実に変わる百回の大丈夫は百倍の勇…
通り雨、犬といっしょに夏、背中を濡らし大きな雲が頭の上を黒く塗りつぶす息を詰まらす俄かな夜の中を走ってきた雲が光を放ち大地を震わす ついさっきまでの太陽の中 ぼくは影を落とし 座り込んでの手探りの中 もう戻ってはこない通り雨、ぼくと似た人が黒…
九を超えられないんだ十に辿り着かないんだ生まれてこの方絶えず数を数えている一から九までいってはまた一に戻っていく一から九までいってはまた一を数えているずっと同じ繰り返しだいつもと同じ光景だ何度やってみても九から先には進めないどんなに頑張っ…
梅雨明けと前後してそれまで沈黙を守っていた公園のクマゼミたちが申し合わせたように一斉にワシワシを始める。立秋と前後してそれまで沈黙を守っていたツクツクボウシが申し合わせたように一斉に物語を始める。お盆と前後してそれまで沈黙を守っていた道ば…
若い頃からこういった文章を書いていたのだが、二十歳のある時期に書いたものの中に未来を予言している文章がいくつかある。内容は実に身近なことが多く親戚の人が離婚して戻って来るとか福岡が水不足になるとかで、特に人類が滅亡するなどといった大それた…
「二つ目の角を曲がると急な坂がある。確かにそれは近道だ。だから皆そこで曲がって一気にその坂を駆け登りたがるのだ。だけどおまえはそこで曲がってはならない。まっすぐ続いているこの道をゆっくり歩いて行くのだ」「二つ目の角を曲がるとおまえのことだ…
とりあえず今日が休みだったことを記しておく早起きして床屋に行ったことを記しておくその床屋でずいぶん待たされたことを記しておくその帰りにスーパーに行ったことを記しておくスーパーでカップラーメンを買ったことを記しておくそうそうあんパンを二個買…
いろんな人が完全とか完璧とかを目指して頑張っているんだね。それはそれで立派なことだからその気持ちを切らしてはならない。だけどね、あまり完全すぎるとあまり完璧すぎると、息苦しくて可愛げを感じなくなるものだ。日本という国は可愛げというものを何…