くきなみ村から

人生万事大丈夫

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ライバル

ぼくが中学生の頃親戚の家にクリという犬がいた。横須賀の久里浜生まれということでその名をつけられたのだった。お米屋さんやガス屋さんを噛みつくわそのくせ不審者が来ても吠えないわまったく役に立たないアホな犬だった。ただ子作りだけは励んでいたよう…

ともだち

何を言っても知らんぷりしてしたい放題のネコを見て人はこう思っているのであります。『無知で身勝手な生き物』と。畜生扱いのネコだけど、実は人間の言葉もその人の性格も社会の動きもこの国の未来も恐らくは宇宙の仕組みだって何もかもわかっているのです…

【詩】ともだち

何を言っても知らんぷりしてしたい放題のネコを見て人はこう思っているのであります。『無知で身勝手な生き物』と。畜生扱いのネコだけど、実は人間の言葉もその人の性格も社会の動きもこの国の未来も恐らくは宇宙の仕組みだって何もかもわかっているのです…

赤い糸の話

嫁さんと恋愛関係にあった頃、ぼくたちは何度か別れたことがある。『二度とこんな奴と付き合うものか』と思いながら、ぼくは嫁さんとの距離を置いたのだった。だけど、それで終わることはなかった。何度別れても、ぼくたちはよりを戻し、最終的に結婚まで至…

ライバル

ぼくが中学生の頃親戚の家にクリという犬がいた。横須賀の久里浜生まれということでその名をつけられたのだった。お米屋さんやガス屋さんを噛みつくわそのくせ不審者が来ても吠えないわまったく役に立たないアホな犬だった。ただ子作りだけは励んでいたよう…

【詩】台風と床屋

大雨が降る。風が吹く。台風が接近すると年寄りはなぜか外に出たがるものだ。ところが年に一度の悪天候で今日は患者は来ないと踏んだ行きつけの病院は臨時休業だ。行き場をなくした年寄りはいちおう看板回している床屋を見つけてはたむろする。おかげで床屋…

ドキュメント1.16~1.19

【1月16日】 21:00 仕事が終わり、家に帰ってきた。車から降りて、マンションに入ろうとすると、入口の前に、15センチほどの薄茶色の棒が2本落ちているのに気が付いた。何だろうと近づいて見てみると、なんとウンチだ。おそらく犬の物と思われる。 【1月1…

隣の町の噂話

福岡県に芦屋という地名がある。兵庫県の芦屋と違って、ここは市ではなく町である。 歴史や茶の好きな人は「芦屋釜発祥の地」、ギャンブルの好きな人は「芦屋競艇」のある所、と言えばお分かりいただけるだろう。 ここは昔から異質な場所であったと聞いてい…

隣の町の噂話

福岡県に芦屋という地名がある。兵庫県の芦屋と違って、ここは市ではなく町である。 歴史や茶の好きな人は「芦屋釜発祥の地」、ギャンブルの好きな人は「芦屋競艇」のある所、と言えばお分かりいただけるだろう。 ここは昔から異質な場所であったと聞いてい…

【詩】大雨の草むら

大雨の降る夜の草むらで静かに鳴いている虫たちはこの雨に濡れていないのだろうか巣の浸水に困ってないのだろうか土砂崩れに悩んでないのだろうか避難場所に逃れているのだろうか稲光がまぶしくないのだろうか雷の叫びが怖ろしくないのだろうかもしかしても…

呼んでいる

昼間、顔なじみの警察の方が来て、「昨日は大変やったよ。自殺志願者がおってねえ。ビルから飛び降りようとしたところを、取り押さえたんよ。下には消防署が来てマットを準備しとったけど、飛び降りられたら一生悔いが残るけねえ」と言っていた。「そういえ…

呼んでいる

昼間、顔なじみの警察の方が来て、「昨日は大変やったよ。自殺志願者がおってねえ。ビルから飛び降りようとしたところを、取り押さえたんよ。下には消防署が来てマットを準備しとったけど、飛び降りられたら一生悔いが残るけねえ」と言っていた。「そういえ…

【詩】光ジュース

このジュースには飲み方があって栓を抜いたらすぐに目を閉じなくてはなりません。目を閉じないとどうなるのかというと見えなくていいものまでが見えてしまうのです。それがとても危険なわけです。だから栓を抜いたらすぐに目を閉じてください。そうすればす…

【詩】空が雨雲を脱いでいる

空が雨雲を脱いでいるぶ厚い雲を脱いでいる湿った体を乾かす様に青い素肌を陽にさらす空は乾いた青い素肌を赤い化粧で染めていくこよい宴に出かけんと赤く素肌を染めていく空はその身を染めた後黒いドレスを身に纏う小さな光を散りばめた黒いドレスを身に纏う

【詩】痩せぎすのバッタ

濃い緑色の作業着を着込んだ痩せぎすのバッタは滑り止めの付いたギザギザの地下足袋を履き股の膨れたニッカーボッカーに力を込めて、工事現場を飛ぶように歩いている

【詩】生命の欲

生命の欲がギラギラギラギラとこの世に強く執着しているので生命の欲がギラギラギラギラと未だ目を輝かせ生きているのでこの広く狭い三千世界の中から未だ抜け出せないでいるのです。生命の欲に振り回される人生にイヤ気が差しているぼくは早くここから立ち…

国語

「みんみんみんみん、せみがなくもくもくもくもく、くもがわくもうすぐたのしいなつやすみ」ぼくが小学校1年の夏休み前に、国語で習った文章だ。戦後に入ってからは国定教科書ではなくなったので、その教科書会社で掲載している文章が違うと思う。 他に、こ…

【詩】お風呂の扉がひとりでに開く

お風呂の窓を開けておくと、お風呂の扉がひとりでに開く。今日この頃の強い風のいたずらなんだと知ってはいるが、ついついそこに色白な女が立ってはいないかと妙な幻想に怯えている。お風呂の窓を開けておくと、お風呂の扉がひとりでに開く。このマンション…

【詩】ぼくは忘れない

転校した小学校の同級生から声変わりしたおっさん声で電話がかかった時のショックをぼくは忘れない二十歳の頃、久しぶりに初恋の人と会った時にその人が孕んでいたショックをぼくは忘れない高校の同窓会名簿親しかった友人の欄に物故と書かれていた時のショ…

【詩】ゲリラ豪雨

・・・・ドブドブ、ドブドブ、ドブドブと聞き慣れない音の雨が降る。ブカブカ、ブカブカ、ブカブカと聞き慣れない音が窓を打つ。もはや意味のなくなったワイパーは面倒くさそうに水の中を泳いでいる。窓の外はゆがんでいるのか。いやいや、雨でにじんでいるのだ…

もうすぐ新学期

1、もうすぐ新学期 先日ラジオを聴いていたら、北九州市は来週の月曜日から、福岡市は来週の火曜日から、小中学校の新学期が始まると言っていました。もう夏休みは終わりなんですね。 ぼくが今小中学生だったら、耐えきれないだろうな。第一、宿題が出来な…

【詩】元気に小便

古い思考に頼っていても今ある問題は片付かないなぜなら今ある問題は古い思考の積み重ね今の思想に頼ってみても今ある問題は片付かない理想ばかりが先走っては新たな問題を生んでいく今ある問題に対処するにはそこから吹いてくる風を焦らず騒がず期待して待…

腹筋君

高校時代、ある人から「飯を食わずに運動したら筋肉が付くよ」と聞いて、部活のある日には昼食をとらなかった。そのおかげで、脂肪が溜まらず、厚みのない皮膚の下にいる腹筋君が、しっかり顔を出していた。 前に、そういう体に戻そうと、昼食を抜いて腹筋運…

【詩】空のスイマー

空のスイマーは両手を大きく広げスイスイと流れるように風の中を泳いでいく。遠い日の水の中の想い出が空のスイマーの頭の中を駆け巡る。暑い日、水の中を懐かしむかのように空のスイマーはスイスイと流れるように風の中を泳いでいく。

【詩】確かに今でも君はぼくの中にいる

あれは高校一年、国語の授業の時だった。何となく後ろを振り向くと君がぼくを見ていた。その時からいくつもの歌を君のために作った。だけど君にその歌を聞かせることもなく。 時は過ぎて行った、 ドラマなど起こらないままに。 だけど、 確かに今でも君はぼ…

【詩】汗

頭の上に重く大きな塊が乗っている塊には猛暑という名前がついているその重さに押されて汗が染出てくる塊の中にはいろんな夏が入っている声を発して塊の中を飛び回っているその声に刺激されて汗が染出てくる

【詩】サイダー1968

ピチピチ、ピチピチ、ピチピチ、ピチピチ、宿題帳の横にあるサイダーが、しきりにピチピチはねている。この問題を解いたら飲んでやる。そう心に決めてぼくは、算数の問題をずっと見ている。机の上には各科目の教科書と、読書感想文の課題図書と、何も書いて…

【詩】満員電車

飽くことのない人の夢が真夏の日々の汗に消えていく取り乱さずに言葉を吐けば見えぬ疲れが息を詰まらす 幸せかい、こんな人混みが 楽しいかい、こんな人混みが休む間もなく満員電車で生暖かい風、身にくらって夜はまだかと時を恨んで帰るまではと体裁つける …

未来を垣間見る

中3の頃だから今から五十数年前になるか。 夕方、外に出た時のことだった。いくつもの豆球のような光が、隊列をなしてぼくの頭の上をフラフラと飛んでいるのを見つけた。隊形は竹ひご飛行機の骨組みのようで、大きさはそれよりも何倍も大きかった。音はなあ…

【詩】来世人事

神さまお願いがあるのです。次の人事のことなのですが、私を口元が針になっている奇怪な容姿の生き物として誕生させないでくださいな。動物の血を頂戴することが究極の目標のような人生を、動物の血を頂戴することで目のかたきにされる人生を、あゆませない…