詩
ケロケロ人生重ねていけばいつかは手が出る足が出るそれまでしばらく我慢してここで静かに泳いでなさい手が出て足が出たあとには陸での暮らしもできるから今は生き急がずに焦らずにここで静かに泳いでなさい陸の暮らしを重ねていけば本当の恋に出会うのだか…
「君を愛してる」と言いかけた時いつも同じように終わる君の夢言い出せなかった大きな悔いがいつまでも残る。あの若い日々は先へと進まないいつもいつも途切れた映画のように後味悪い夢のいたずら朝の目覚めは夢を引きずって力の入らない一日の始まりあの頃…
天井のマー坊の存在を知ったのは今から六十年以上前のことだった。夜中何かの気配を感じ目が覚めた。気配のする天井の方に目をやるとそこに見慣れない顔が映っていた。母の話だと彼はマー坊という名のぼくの生涯の守り神なのだそうだ。マー坊はなにを語るわ…
愛という名の貸借表には、資本がとても大切なのです。その大小によって愛の資産は大きく変わってくるものなのです。お金の話ではありません。愛情の深さでもありません。人の心の豊かさが愛という名の貸借表の資本なのです。見た目が悪くてもいいのです。理…
スーパーで売っているお惣菜がすぐになくなってしまうのは、決してそれが「うまい!」という理由ではなくて、値段がそこそこ安いからだ。実はそこに並べてあるようなお手軽で脂っこい食べ物くらい、ちょっとばかり料理をかじったことのある人なら誰でも作る…
70年頃に流行った言葉の一つが「自由」だった。何でこの言葉が流行ったのかは知らないが周りは事あるごとに自由を主張していた。深夜ラジオの影響もあって、当時中学生だったぼくも時代に便乗し何かにつけて「自由、自由、自由」と連発して口にしていたの…
機械がぼくの将来の死因を探っている。検尿、血圧、採血、バリウム、心電図、レントゲン、問診、再び血圧血圧血圧。この数値、血圧がどうたら、こうたら。これは高い。やれ脳梗塞だ心筋梗塞だ。お医者様お医者様大丈夫ですよ大丈夫。わたしゃこんなことでは…
公園に数羽のスズメがいた。何かをひろって食べていた。スズメの周りにハトがいた。何かをひろって食べていた。一羽のカラスがやって来た。スズメは慌てて飛び去った。ハトはトコトコ遠ざかった。カラスはそこにいすわった。新手のカラスがやって来た。いす…
夜の竿は 星を刺しさてここいらで泣きましょか暗い街に 影を刺しつゆなかけるな 深い雨裸電球 闇に濡れ過ぎし光を 追いまするしだれ柳 風に揺れ落ち葉ひらひら 終列車 うっすら三日月 闇に浮かびます 弱った体が 街に陰ります 犬の遠吠え 闇に響きます 疲れ…
ここからこの道を歩いて行けば、ずいぶん近道になるのだけれど、ぼくはあえてこの道を歩かない。別に車が多く通る道ではないし、舗装してない砂利道でもないし、とくに霊が集まる道でもないし。でも直感とでもいうのだろうか、なぜだかこの道は気が進まない…
空は重黒く垂れ下がっていた。風は艶めかしく吹いていた。雨は後ろめたく降っていた。街は空鉄砲に撃たれていた。若者は自由に明け暮れていた。大人は孤独を売り物にしていた。年寄りは赤信号で疾走していた。旅人は山頂の先を見つめていた。会社員は職安に…
今を生きる人類は冷えていますからね、暑さの中では生きていけないんですよ。だからバタバタと倒れてしまうんです。文明を進化のように言ってますけどね、実は人類を退化させる仕掛けでしてね。そうそれは劇薬と言ってもいいのです。仕掛けた側は劇薬だと思…
もしかしたらぼくたち人間はこの一生を知りつくした上で生れてきたのかもしれないね。たまに先のことがわかったり見えたりするのはそのせいでたまにそれを思い出すからだ。未来全てを思い出せないのは先のことはわからないという先入観からくるものだろうね…
漠然と思い浮かべてた 大切な一日が今日風に乗って おれのもとにやって来た空には大きな雲が 雨はおれを叩きつける悪いことを考えている 出来るんだ、空を翔べ!運命の一日だと 誰かが言ったおれの人生は今日に かかっているんだ今までやってきたことはすべ…
ああ、これはこれはあなたはあなたでしたよね。まあ、立派な立派なおばちゃんになっちゃって。いや、若い頃が嘘のようです。ぼくたち男子を魅了したそのつぶらな瞳の横には幾筋もの小じわが出来ちゃって。うっ、やっぱりそうなるのか。ぼくたち男子のくちび…
算数の答は、与えられた枠内だけで考えるのではなくその枠外に延長線を引くことで求められることが多い。もしかしたら、この人生も自分の枠内だけではなく枠外に延長線を引くことで答が求められるのかもしれない。この人生に時々『大嫌いな人』というのが登…
これだけはつたえておかなければというものがぼくの意識の領海をプッカプカと漂っているのですがそれが何なのかわからないのです。以前から気になっていたのですがなかなか答が落ちてこないのです。ただ朝目覚める前の意識の中ではそれは充分にわかっている…
『大丈夫』という文字をこころの中に書き込んで何かあるたびにそれを観る何か思うたびにそれを観る何か触れるたびにそれを観る何か感じるたびにそれを観る何か耳にするたびにそれを観る何か目に映るたびにそれを観る人が何かを言うたびにそれを観る人が何か…
老いた野良猫尻尾を振ってナムアミダブナムアミダブ不安な心でいるのだろうか願を掛けているのだろうかご先祖さまの供養だろうかそれともあの世のため息か老いた野良猫後光が差してナムアミダブナムアミダブお盆過ぎても彼岸過ぎてもお寺さんでもお宮さんで…
広場の隅からその家までは公式では本塁から三塁位の距離しかなかっただだろう。だけどぼくたちのボールはなかなかその家に届かない。だから学校から帰ると毎日右利きのヤツは力まかせに左利きのヤツは窮屈そうに重たいバットを振りまわし左方向のその家に放…
家の前のバス停からバスが停まる「キー」という音がする。続けて「プー」というドアーが開く音と「お待たせしました」という声だ。ぼくはその声に軽く目を覚ました。「始発かな。もう五時になるのか」と、なにげなく時計を見てみるとまだ二時を何分か過ぎた…
月の作る影の中に虫が鳴く虫の鳴く声はススキを揺らしススキが揺れると声は止む声なき夜のしじまの中に小さな妖怪が潜んでは時間とともに成長する長い長い時間の中で巨大に育った妖怪たちがじっとこちらを窺っている今にも襲ってきそうな気配の中幼いぼくの…
君に逢えれば こんなことだって忘れられると 思ったものさ笑い話に 君のことを歌ったことも 昔のことさ夢はいつも 美しいものでしあわせそうな 二つの影を映し出しては 消えていったあこがれては 思い悩み 月夜待から 二つの道を 選ぶいとまが 君との川で流…
「これを落としそうな気がする」そう思った時は決まってそれをどこかに落としている。だから「これを落としそうな気がする」時は「これを必ずポケットに入れる」と自分に言い聞かせるよう心がけている。ところが「これを落としそうな気がする」時ぼくはいつ…
寝つきが悪いと思っているのは目を閉じて眠ってないからです寝起きが悪いと思っているのは目を開けて起きてないからです何を言っているかと申しますとちゃんと目を閉じて眠るならばちゃんと目を開けて起きられると、言っているのでございますそんなの当たり…
目覚めてみると海の上立っているのか、座っているのか雲ひとつない海の上昼間なのか、夜なのかわからない、わからない物音ひとつ聞こえないわからない、わからない季節もここではわからない夏であるのか、冬なのか何ひとつない海の上船も見えない、人もいな…
国境らへんにぼくらは立って、ぼくらは立ってこの歌を歌って歌って、歌っていくのだ国境らへんにぼくらは立って、ぼくらは立ってこの歌を歌って歌って、歌っていくのだギターの弦をぼくらは張って、ぼくらは張ってジャカジャカジャカジャカ、やっていくのだ…
あの日の会話の末尾に「だけど好きだ」という言葉を付け加えていたとしたら、少しは人生変わっていたかもしれない。その時の思いの末尾に「だから幸せだ」という思いを付け加えていたとしたら、大きな幸せを味わえたのかもしれない。その幸せの末尾に「それ…
とりあえず、背筋をピンと伸ばしてみるんだとりあえず、前だけ見つめて歩いてみるんだとりあえず、挨拶だけでも交わしてみるんだとりあえず、相手の目を見て話してみるんだとりあえず、肩の力をスッと抜いてみるんだとりあえず、深呼吸を何度かやってみるん…
1,その高校は市の中央にそびえる山の中腹に建っている。バスを麓で降りて、そこからは歩いて狭く長い坂道を登ることになる。春や秋は様々な花が咲いていて長い坂を忘れさせてくれるけど夏や冬はその坂道が地獄と化す。夏は所々の急な勾配と陽射しで朝から…