高校時代、ある人から「飯を食わずに運動したら筋肉が付くよ」と聞いて、部活のある日には昼食をとらなかった。そのおかげで、脂肪が溜まらず、厚みのない皮膚の下にいる腹筋君が、しっかり顔を出していた。 前に、そういう体に戻そうと、昼食を抜いて腹筋運…
中3の頃だから今から五十数年前になるか。 夕方、外に出た時のことだった。いくつもの豆球のような光が、隊列をなしてぼくの頭の上をフラフラと飛んでいるのを見つけた。隊形は竹ひご飛行機の骨組みのようで、大きさはそれよりも何倍も大きかった。音はなあ…
最近見かけなくなったもののひとつに、蠅とり紙というものがある。よく魚屋とかに天井から吊るしてある、両面がベタベタしたガムテープのようなものだ。 ぼくの家は、高校の頃までポットントイレだったため、よくトイレからくそ蝿が飛んできた。トイレの中に…
1 7年前、ブログのネタ探しをしていた時に、大正末期から昭和初期にかけて『楓物語』という童話があったというのを知った。主人公「楓」を中心に、友人の「弁太」や「久良子」たちと繰り広げる話だという。その物語が刊行されたのは1925年。それから59年後、…
昔録っておいたビデオを見ていると、たまに当時のニュースが入っていることがある。そういう時はつい見入ってしまい、「ああ、この当時こういうことがあったなあ」なんて思っている。 それに絡んで、ちょっと困った問題がぼくの中で起きている。それは、この…
前の会社にいた頃の話。昼食後、ぼくはいつも自分の車の中で寝ていたのだが、そこで時々不思議なことが起きていた。何者かが車内で横になっているぼくのお腹の上に乗り、ドンドン飛び跳ねるのだ。『誰だ!?』と目を開けても誰もいない。おかしいなと思いな…
三十代の前半だったか、足繁く飲み屋に通った時期がある。思い起こせば不機嫌な生活を強いられた時期だった。とにかく毎日がうつむき加減で首や肩のこる毎日だった。 足繁く飲み屋に通ったのは、そんな不機嫌で肩や首のこる生活から少しの時間でも逃げ出した…
今から数千年後、今の歴史を失った後の話である。 ある考古学者が、我々の時代の地層を調べていた。この学者は以前、その地層から偶然民家跡を発見し、そこから発掘された茶碗や湯呑を見て、この時代も縄文や弥生と同じく土器を中心とした生活が営まれていた…
意欲なんて持たないほうがいい。意欲を持って事に当たろうとすると、いい仕事をしてやろうなどという余計な我が入ってしまうから、いい仕事が出来なくなってしまう。 たとえば文学とか音楽とかがいい例で、意欲作などというふれこみの作品ほどつまらないもの…
小学・中学・高校と、ぼくは理科という教科が苦手だった。生物・化学・地学・物理、どれを取ってもぼくは駄目で、とくに生物にいたっては、高校時代に再試と追試の二つの試験を同時に受けたほどの腕前だ。 いまだに化学式もわからない。地学なんかは習っても…
ケンポーQ錠[メリケン製薬] 効能一部の人の心の支えになる。一部の人の飯のタネになる。たまに関連の本が売れる。 注意平時では良薬になることもありますが、本来は劇薬であり、有事には毒薬になることが考えられます。お取扱いには十分ご注意下さい。この…
知人の家にリックという、オスのミニチュアダックスがいる。かなり前から飼っていて、人間の歳にするともう七十歳を超えているという。なるほど目は白内障になっていて、歩きもヨタヨタしている。 ところがそのリック君、そんな体になってはいてもあちらの方…
ぼくら家族が住むこの家にはもう一つの家族が住んでいる。彼らは老若や男女の区別なく凄く好戦的で無慈悲で野蛮でぼくらの姿を見つけるや否やきゃーきゃーと奇声を上げてはきもの片手に襲ってきたり猛毒の霧をふりかけてきたり時に凍死させようと試みたりこ…
部活を引退したぼくたちを待っていたのは、慣れない夕方ラッシュだった。それまでわりと遅く家に帰っていたので、いつもバスはガラガラだった。短い乗車時間だったけど、だだっ広い空間の中でぼくたちは疲れた体を横たえて寝ていた。それがあまりに心地よか…
幼い頃から、遠い灯りを見ると、何か惹かれるものがあった。心がウキウキしてきて、夢や希望がふくらんでくるんだ。ところが昼間そこに行ってみると、別に大したところではなく、パチンコ屋のネオンだったり、カラオケ店の看板だったりする。 人生のイベント…
神とか仏とかいう、この生命をつかさどる『何ものか』は、生きとし生けるものに差別なく、堅実な人生を授けている。ところが、その『何ものか』の気まぐれなのか手違いなのか、時に宝くじ一等とか超万馬券とか、どう考えてもどう解釈しても堅実な人生とはか…