今から数千年後、今の歴史を失った後の話である。
ある考古学者が、我々の時代の地層を調べていた。この学者は以前、その地層から偶然民家跡を発見し、そこから発掘された茶碗や湯呑を見て、この時代も縄文や弥生と同じく土器を中心とした生活が営まれていたとして、「陶磁時代」と名づけた有名な学者であった。
「なんだこの鉄の線は?」
見ると、二筋の鉄が道のように張り巡らされていた。その後も、その鉄の道は日本中いたるところで見つかった。
「先生、何でしょうか、この鉄の道は?」
「うん、私が見たところ、これは城壁の跡だと思われる。おそらく外からの侵入を防ぐためのものだ。」
翌日の新聞は大々的に発表した。
「あの鉄の道は、古代の城壁の跡だった!」と見出しの打たれた記事には、「この張り巡らされた鉄の道を見れば、その当時日本がいくつもの国に分かれていたことがわかる」と書かれていた。
このことは学会に発表され、その後定説になった。かくて我々の時代は、JRや私鉄の線路の発見のせいで、卑弥呼の時代と同じ扱いとなってしまった。
さて、その後その考古学者は、札幌と東京と名古屋と大阪と福岡に屋根付きの巨大な広場を発掘した。
「おお、これは古代の宗教の祭祀場に違いない。ここは神聖な場所だ。おそらくその当時の日本は大きく分けると五つの国に分かれていたのだろう。そして、その国の首都にはこういう大きな祭祀場がある、ということがわかった」
かくてドーム球場は、その学者のせいで宗教の場とされてしまった。