(1)
姓名判断に『後家数』と呼ばれる画数がある。
その画数を持った女性の多くの人が、離婚したり、離婚はしないまでも別居したていたり、行かず後家だったり、悪い時には死別したり、という経験をしている。
あえてその画数をここには書かないが、その画数を持った人に共通して言えるのは、心のどこかに、男性を見下している部分があるということである。
(2)
30年ほど前に、母の知り合いから「娘の名前を鑑てくれ」と頼まれたことがある。その娘は、その1年前に結婚していた。そのため、最初は娘を心配しての親心だろうと思っていた。
さて、頼まれはしたものの、ぼくは基本的に人を占うことは好きではない。そこで、「占いはしませんから」と断った。ところが、「どうしても」と言ってきかない。そこには、依頼者の母親もいたのだが、二人して頭を下げる。さらにそばにいた母も頼みだした。そこで、渋々観てやることになった。
名前を観たとたん、ぼくは絶句した。その娘は『後家数』を持っていたのだ。それに、性格がえらく強い。家庭に収まるような名前ではなかった。
そのため、何と言っていいかわからなくなって、ぼくはしばらく黙っていた。するとその人は、しびれを切らしたかのように「どんなに悪くてもいいから、言ってくれ」と言った。
「いや、まだ未熟ですから、どう説明していいのかわからないので…」
とぼくは言葉を濁した。しかし、相手はしつこく「言ってくれ」と言う。
そこで、ぼくは口を開くことにした。
「はっきり言うと、娘さんは家庭向きの人ではありません。性格がちょっときついみたいですね。男を見下すようなところがある。ご主人との相性も悪いみたいですし、先方の両親ともうまくいっているようには思えない。つまり、孤立しているわけですね。…もしかしたら、近々戻ってくるかもしれませんよ」
すると、その人は横にいた家の人と、意味ありげに目を見合わせ、苦笑していた。
「これは何かあるな」と思っていたら、案の定、数ヶ月後その件で連絡が入った。
「娘が別れて戻ってきた」と言うのだ。
連絡を受けた母が「何でまた・・?」と聞くと、その人は、
「理由は、前にしんた君に占ってもらったとおりなんよ。あの時、すで別れ話が出ていて、確認の意味で観てもらったんやけど・・」ということだった。
(3)
むかし小説で読んだある姉妹の話。二人とも同じ画数だった。それも後家数・・。どちらも性格が強く、特に妹のほうは極端で、完全に男を見下していた。
で、二人はどうなったかというと、姉の方は若くして夫と死別し、妹の方は若くして離婚した。
で、どちらも一人暮らしになっている。
『後家数』というのは、物語にさえ影響力を与える強烈なものなのである。
(4)
こういう話もある。
何年か前にある女性から、
「わたし、夫と離婚して一人でやっていきたいんだけど、それが可能になる名前ってある?」と聞かれたことがある。
「そういうのはありません」
「後家運というのがあるでしょ。名前でそういうはないの?」
「何で不幸を欲しがるんですか?」
「わたしにとっては、それが不幸じゃないんよね」
「幸福ということですか?」
「そう。ね、教えて」
あまりにしつこく言うので、気は進まなかったが、『後家数』を教えてやることにした。
「これで、離婚できる?独り立ちできる?」
「本人の努力次第です」
その後、その人とは会ってないので、今どうなっているのかは知らない。が、その名前を使って、コツコツと独立に向けて頑張っていたという話は聞いた。
幸福の型は、人それぞれである。(2006年8月2日)