お風呂の窓を開けておくと、
お風呂の扉がひとりでに開く。
今日この頃の強い風の
いたずらなんだと知ってはいるが、
ついついそこに色白な
女が立ってはいないかと
妙な幻想に怯えている。
お風呂の窓を開けておくと、
お風呂の扉がひとりでに開く。
このマンションの構造上の
問題なんだと知ってはいるが、
ついついそこに頑強な
男が立ってはいないかと
変な妄想に怯えている。
だけどそこには誰もいない。
家にいるのはぼく一人、
鍵もしっかりかけているから、
女が立っているわけもなく、
男が立っているはずもない。
しからば霊の仕業だと、
いらぬ不安に震えてみるが、
こんなに風が吹いているから、
そんな震えも消し飛んで、
風に安堵すら覚えている。
お風呂の窓を開けておくと、
お風呂の扉がひとりでに開く。