こうやって何十年経つのだろう。
わたしはこの切り株の上に座り
船がくるのをずっと待っている。
どこかの国から流れ着いた
ビールのジョッキを手に持って
いつまでもいつまでも海を見ている。
船の姿を見つけることがあれば
この切り株の上に座ったままに
ここまで来いと念じている。
別に煙で信号を送ったり旗を振ったり
相手に存在を知らせるような行為は
一切、絶対、金輪際やらない
それが自分のスタイルではないと
勝手に思い込んでいるからだ。
船が去ったあと、
わたしはうす笑みを浮かべ
今回はタイミングが悪かった。でも
次があるさと自分を慰めている。
こうやって何十年経つのだろう。
わたしはこの切り株の上に座り
船がくるのをずっと待っている。