若い頃、就活をしていた時期に、いつも困っていたのが履歴書にある趣味の欄だった。当時やっていた『作詞』『作曲』などと素直に書けばすんだ話なのだが、「作詞や作曲は趣味ではなく人生だ!」などと変な方向に考えてしまって、その趣味の欄だけがなかなか埋まらないでいた。
そこで仕方なく、ありふれた『読書』と書こうとするのだ。しかし『読書』と言っても、誰もが読んでいるような小説などを読んでいるわけではない。主にマンガを読み、気が向いたら軽い人文書を読む程度だ。だから面接の時に、
「好きな作家は?」などと訊かれたら困る。
ということでその悩みが趣味の欄を埋めさせない。
とはいえ読書としか書けないから、結局は読書と書いてしまう。すると面接で案の定、
「好きな作家は?」と訊かれてしまう。そこでカーッとなったぼくは思わず、
「つげ義春です」と答える。
「誰ですか?」と突っ込まれる。
「マンガ家です」と仕方なく答える。
そこまで何とかうまくいっていた面接も、そこから話が進まなくなった。
ぼくは、過去面接で何度か落とされているのだが、その原因の一つに、趣味の欄があったのではないだろうか。他は完璧だったと思っている。